投資信託の正体元銀行員が忖度なしで斬る
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投信は値段を見ずに買っている?ブラインド方式の正体

黒文/黒瀬2026年9月11日最終更新 2026年9月11日読了 約6分

投資信託の注文は、値段を見てから出すものではありません。申込を締め切ったあとに、その日の基準価額が決まって公表される。この順番を「ブラインド方式」と呼びます。株を買う感覚で画面を開いた人が最初につまずくのがここ。さらにもう1つ、公表されている数字は1口の値段ではなく1万口あたりの価額です。桁を4つ取り違えたまま「思ったより高い」と言う人を、窓口で何人も見てきました。2つの誤読を分解します。なお本記事は一般的な仕組みの解説であり、個別商品の売買を勧めるものではありません。

ブラインド方式とは?

締め切ってから値段が決まる仕組みです。資産運用業協会の説明はこうなっています。

基準価額が公表されるのは、投資信託の取引の申込を締め切った後で、投資家は当日の基準価額が分からない状況で投資信託の取引を行います。このことを「ブラインド方式」といいます。

資産運用業協会「基準価額と分配金」より

目隠しという語が、そのまま制度の名前になりました。注文を出す時点で約定価格は未確定。買い注文を入れた金額が、いくら分の口数になるかは翌日に分かります。

値段を見て買うのではなく、買ってから値段が決まる。

なぜ値段を隠す必要があるのか?

既存の受益者を守るためです。協会は、基準価額が確定し公表された後に投資信託の取引ができると、すでに投資信託を保有している投資家の利益が阻害されるため、この方式が採用されていると説明しています。

理屈を追うと分かりやすい。仮に価額が判明したあとで注文を受け付けると、上がった日だけ買い、下がった日だけ売る動きが成立します。その差額はどこから出るのか。信託財産、つまり持ち続けている人の取り分からです。売り手側の都合で設けられた不便ではありません。

この点を窓口で説明すると、たいてい納得されます。問題は、説明する機会がほとんどないこと。目論見書には書いてありますが、申込書に判を押す場面でこの話が出ることは多くありませんでした。

指値注文はなぜできないのか?

価額が1日に1つしかないからです。協会は、証券取引所に上場している株式は市場が開いている間、刻々と株価が変動し、その時々の株価で売買が可能だとしたうえで、一般的な投資信託の基準価額は組み入れている株式や債券などの時価評価を基に算出され、1日に1つの価額として公表されると述べています。

1日1つの価額しか存在しない以上、「この値段になったら買う」という指定は入れようがありません。価格の系列が存在しないところに条件を置けないからです。

株式と一般的な投資信託の取引の違い(資産運用業協会「基準価額と分配金」の記載をもとに作成)
上場株式一般的な投資信託
価格の動き市場が開いている間、刻々と変動1日に1つの価額として公表
注文時の価格その時々の株価で売買が可能申込締切後に決まる(ブラインド方式)
値段の指定指値ができる約定価格を指定できない

「基準価額が下がったところで買いたい」という相談を何度も受けました。狙って当てる手段は、制度上ありません。下がった日を選べないという前提から、積立という買い方の合理性も出てきます。

公表されている数字は1口の値段なのか?

違います。1万口あたりです。協会は、投資家が投資信託を購入・換金する際は基準価額で取引が行われるとしたうえで、1口1円で運用が開始された投資信託は1万口あたりの基準価額を公表していると明記しています。

ここが2つ目の落とし穴。基準価額12,000円と書かれていても、1口が12,000円という意味ではありません。1口は1.2円です。

協会が挙げている計算例

Zファンドが1口1円で募集し、Aさんが3万口、Bさんが7万口を購入。受益者はこの2人だけで、信託財産は3万円と7万円で10万円になります。10万円で運用を開始し、1年後に12万円になった場合。口数は10万口のまま変わらないので、12万円÷10万口で1口1.2円。1万口あたりの基準価額は12,000円です(信託報酬などのコストはないものとして計算)。

算出そのものは単純です。投資信託の資産のうち投資家に帰属する額を純資産総額といい、これを総口数で割ると1口あたりの価額になる。割り算1つで出ます。

12,000円は1口の値段ではない。1口は1.2円。

この表示が定着している理由は、1口1.2円では動きが読み取りにくいからでしょう。ただし読み違えた人にとっては、基準価額が高いファンドは割高だという誤解の入口になります。1万口あたりの数字は、そのファンドの中での推移を見るためのもの。別のファンドと横に並べて高い安いを言う数字ではありません。1万口あたりという単位は、運用報告書の費用明細にもそのまま使われています(運用報告書の6区分)。

換金の申込にも同じ時間差があるのか?

あります。しかも入金までの日数が長い。協会は換金の受付時間について、投資信託を購入した販売会社に営業時間の午後3時30分(換金の受付時間は投資信託によって異なります)までに申し込むと案内しています。

支払日は商品によって分かれます。MRF、MMF、中期国債ファンドなどの日々決算型は、通常、換金の申込日の翌営業日に支払われます。それ以外の投資信託は、原則として換金の申込日から4営業日目以降。日々決算型以外の場合、申込から実際に口座へ振り込まれるまでに4営業日はかかるため、急にお金が必要になった場合にはこの点を考慮する必要があると協会は注意を促しています。

換金代金の支払日(資産運用業協会「換金の種類と手続き」の記載をもとに作成)
商品の型支払日備考
日々決算型(MRF・MMF・中期国債ファンド等)通常、申込日の翌営業日キャッシングの申込なら当日。利用限度額は500万円(販売会社により異なる)
上記以外の投資信託原則、申込日から4営業日目以降代金の受け取りまで通常4〜5営業日

クローズド期間という制約もあります。投資信託によっては一定期間解約ができないものがあり、事前の確認が必要です。買うときの目隠しより、売るときの日数のほうが生活に直結します。

実際にいくらで何口買えたのか、どこで確認するのか?

取引報告書です。投資信託の取引が成立した場合、販売会社は契約締結時交付書面である「取引報告書」を投資家に送付することになっています。ここで初めて、自分がいくらで何口買ったかが確定した形で分かります。

記載されるのは、購入したファンドの名称、取引数量、単価、約定金額(取引数量×単価)、手数料、消費税など。注文時には空欄だった単価と約定金額が、ここで埋まるわけです。

窓口時代、この書面を封も切らずに保管している方が大半でした。買った日に読む価値がある唯一の紙です。手数料の構造そのものは投資信託のコストの裏側で3層に分けています。

結局、注文前に何を決めておけばいいのか?

金額と締切時刻の2つです。価格を当てにいく余地がない以上、決められるのはそこしかありません。

  1. 金額で発注する:約定価格が事前に分からないため、口数指定より金額指定のほうが予算を管理しやすくなります。
  2. 販売会社ごとの締切時刻を確認する:換金の受付は午後3時30分までが目安。ただし受付時間は投資信託によって異なります。
  3. 使う予定の時期から逆算する:4営業日という日数を前提に、いつまでに現金化が必要かを先に決めておく。
  4. クローズド期間の有無を目論見書で見る:一定期間は解約できない商品もあります。

基準価額はホームページや新聞などで調べられます。運用会社と販売会社のサイトのほか、資産運用業協会でも基準価額を調べることができ、主な追加型の株式投資信託の基準価額は日経新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞などの日刊新聞に掲載されています。新聞では投資信託の名称が短く表示されている点だけ注意してください。

Q. ブラインド方式とは何ですか?
取引の申込を締め切った後にその日の基準価額が公表される仕組みです。投資家は当日の基準価額が分からない状況で取引を行います。
Q. なぜ値段が分からない仕組みなのですか?
基準価額が確定し公表された後に取引ができると、すでに投資信託を保有している投資家の利益が阻害されるためです。差額は信託財産から出ることになります。
Q. 投資信託に指値注文はできますか?
一般的な投資信託ではできません。基準価額は1日に1つの価額として公表され、その価額で購入や換金が行われます。上場株式のように市場が開いている間に刻々と変動する価格は存在しません。
Q. 基準価額はどう算出されますか?
投資家に帰属する額である純資産総額を、投資信託の総口数で割って算出します。1口1円で運用が開始された投資信託は、1万口あたりの基準価額を公表しています。
Q. 換金するとお金はいつ入りますか?
日々決算型以外は、原則として換金の申込日から4営業日目以降です。MRFやMMF、中期国債ファンドなどの日々決算型は通常、申込日の翌営業日に支払われます。
参考にした一次情報・公的資料
本記事は投資信託の一般的な仕組みと取引の流れを解説したものであり、特定の商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資信託は元本が確保された商品ではなく、市場の変動等により損失が生じ、投資元本を割り込むおそれがあります。申込の締切時刻・換金代金の支払日・クローズド期間は投資信託および販売会社ごとに異なるため、詳細は必ず最新の交付目論見書など各社の公式情報をご確認ください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は2026年9月11日時点の公表資料に基づいています。
黒

黒瀬

投資信託の正体・編集担当。元銀行員の視点から、金融機関が積極的には語らない手数料やリスクの「裏側」を、忖度なしでわかりやすくお伝えしています。運営者情報はこちら

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