投資信託の正体元銀行員が忖度なしで斬る
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投資信託の4つのリスク|元銀行員が明かす裏側|2026年8月版

黒文/黒瀬2026年8月7日最終更新 2026年8月7日読了 約7分

投資信託のリスクは、価格変動・為替変動・信用(デフォルト)・金利変動の4つに整理されます。資産運用業協会が基準価額に影響を及ぼす主な変動要因として挙げている分類です。ところが窓口では、この4つが均等に語られることはまずありません。説明しやすい順に前へ出て、説明しにくいものは目論見書の中へ沈む。その偏りの構造を、元銀行員の立場から並べ直します。なお本記事は一般的な仕組みの解説であり、個別商品の売買を勧めるものではありません。

投資信託の4つのリスクとは何か?

基準価額に影響を及ぼす主な変動要因は、価格変動リスク、為替変動リスク、信用(デフォルト)リスク、金利変動リスクの4つです。資産運用業協会「投資信託が持つリスク」で示されている整理で、投資信託は値動きのある株式や債券などに投資するため、基準価額は市場の動向により変動します。同協会は、この前提として次のように明記しています。

投資信託には元本の保証はありません

資産運用業協会「投資信託が持つリスク」より

4つと聞くと多く感じるかもしれません。実際には、どの投資信託もこの4つすべてを同じ重さで負っているわけではないのです。国内株式だけで運用する投資信託に為替変動リスクはほぼ効きませんし、株式を持たない債券型では価格変動より金利変動のほうが主役になります。投資信託ごとに、リスクの種類や大きさは異なります。ここを一括りにして「投資信託は値動きします」で終わらせるのが、窓口説明の最初の省略です。

投資信託の4つの変動要因(資産運用業協会「投資信託が持つリスク」の整理をもとに作成)
リスクの種類何が動くのか影響を受けやすい投資信託
価格変動リスク組み入れている株式や債券の価格株式を組み入れる投資信託全般
為替変動リスク為替レート外国通貨建ての資産に投資する投資信託
信用(デフォルト)リスク発行体の支払い能力債券を組み入れる投資信託
金利変動リスク金利水準と債券価格債券型、とくに長期債の比率が高いもの

4つあるのに、語られるのはたいてい1つ。

そもそもリスクは「危険」という意味なのか?

違います。資産運用業協会はリスクを「結果が不確実であること」と定義し、具体的にはリターンの振れ幅を指すと説明しています。振れ幅が大きい商品ほどリスクが大きい、という使い方です。上に振れる幅も、下に振れる幅も、同時に大きくなる。危険という日常語とは別物です。

この定義を最初に共有しておかないと、話が噛み合いません。窓口で「リスクは大きいですか」と聞かれたとき、多くの担当者は「損する確率」の話として受け取ります。聞いた側も同じつもりでいる。そこで「そこまで大きくありません」と答えが返れば、双方が納得した気分になって終わりです。振れ幅の話は、誰もしていない。

言い換えると

リスクが小さい投資信託とは、損しない投資信託ではなく、上下の振れ幅が小さい投資信託のことです。同協会が示すとおり、リスクが大きなものほどリターンが大きく、リスクが小さいものほどリターンが小さいという傾向がある以上、振れ幅を削れば期待できる収益も削れます。「安全で高利回り」という条件は、この定義の上では成立しません。

価格変動リスクはどこまで説明されているか?

価格変動リスクとは、投資信託が組み入れている株式や債券の価格が変動する可能性のことです。株価は最終的に市場の需給で決まり、一般に国内および海外の政治・経済情勢や企業の業績等の影響を受けます。4つのうち、窓口でいちばん丁寧に説明されるのがこれです。

理由は単純で、いちばん説明しやすいから。株価が下がれば基準価額も下がる、という因果は誰にでも伝わります。図も描きやすい。過去のチャートを見せれば「そういうものか」と納得してもらえます。

ただ、説明が丁寧なことと、理解が正確なことは別です。窓口に立っていた頃に何度も見たのは、価格変動だけを警戒して、残り3つを無警戒のまま外国債券型を契約するお客様でした。「株じゃないなら安心ですね」という一言。これが出たら、説明は失敗しています。株を持っていない投資信託にも、為替と信用と金利という3方向の変動要因が残っているからです。

為替変動リスクはなぜ後回しにされるのか?

為替変動リスクとは為替レートが変動する可能性のことで、外国通貨建ての資産に投資する投資信託では、一般的には円高になれば基準価額にマイナス、円安ならプラスの影響があります。外国の株式や債券で運用する投資信託には基本的にこのリスクがあります。

後回しになる理由は、直近の相場が味方をしているときに触れたくないからです。円安が続いた局面で外国資産の投資信託を勧めれば、基準価額の推移は右肩上がりに見えます。その上昇のうちどこまでが運用の成果で、どこからが為替の追い風だったのか。分解して説明すると、話は一気に地味になります。

上がった理由を分解しない説明は、下がった理由も説明できない。

逆方向も同じです。運用対象そのものが値上がりしていても、円高が進めば基準価額は伸びません。「中身は良かったのに増えていない」という状態は、為替が打ち消しているだけのことがあります。為替ヘッジの有無で挙動が変わる点も含め、外貨建て資産を持つなら避けて通れない論点です。

信用(デフォルト)リスクは誰が負うのか?

信用(デフォルト)リスクとは、債券等を発行する国や企業が、財政難・経営不振などの理由により、利息や償還金をあらかじめ定めた条件で支払えなくなる可能性のことです。負うのは販売会社でも運用会社でもなく、投資信託を保有している側です。

高い利回りを掲げる債券型の投資信託には、たいてい理由があります。新興国の国債、あるいは信用力の低い企業が発行する社債。利回りの高さは、支払われないかもしれない不確実性への対価として上乗せされているものです。ここを説明せずに利回りの数字だけを並べれば、それは商品の説明ではなく数字の陳列でしょう。

金利変動リスクが効くのはどんな投信か?

金利変動リスクとは金利が変動する可能性のことです。同協会の説明はこうです。

一般的に、金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券の価格は上がります。また、満期までの期間が長い債券ほど、金利変動の影響を大きく受けます。

資産運用業協会「投資信託が持つリスク」より

効くのは債券を組み入れた投資信託、なかでも長期債の比率が高いものです。ここが4つのなかで最も誤解されています。債券は安全、という通説が強すぎるためです。

債券そのものを満期まで持ち切るなら、途中の価格変動は最終的な受取額に直結しません。しかし投資信託は違います。ファンドは市場価格で日々評価され、その評価額が基準価額に反映される。金利が上がった局面では、債券中心の投資信託でも基準価額は下がります。「元本が減らない商品のつもりだった」という声が出るのは、たいていこの場面です。

目論見書のどこを見ればいいのか?

交付目論見書の「投資リスク」の項目です。その投資信託が負う変動要因が列挙されており、4つのうちどれが該当するかが一覧で確認できます。資産運用業協会も、購入の際は目論見書などでリスクを説明している項目にも目を通すことが大切だと案内しています。順序としては次の3ステップが実務的です。

  1. 「投資リスク」に並ぶ変動要因を数える——4つのうちいくつ該当するか。多いほど悪いという話ではなく、聞いた説明との差を測るための確認です。
  2. 説明を受けなかった項目を特定する——窓口で触れられなかった要因こそ、質問する価値があります。答えられるかどうかで担当者の理解度も測れます。
  3. 組入上位資産と通貨の内訳を見る——月次レポートで、どの国・どの通貨・どの発行体に寄っているかを確認する。リスクの偏りは配分に出ます。

長期・積立・分散という考え方の基本は、金融庁のNISA特設ウェブサイト(資産形成の基本)でも整理されています。4つの変動要因を把握したうえで配分を考える。順番が逆になると、リスクの分散ではなく商品の分散にしかなりません。

Q. 投資信託の4つのリスクとは何ですか?
基準価額に影響を及ぼす主な変動要因として、価格変動リスク、為替変動リスク、信用(デフォルト)リスク、金利変動リスクの4つが挙げられます。資産運用業協会「投資信託が持つリスク」で整理されている分類です。投資信託ごとにリスクの種類や大きさは異なります。
Q. 投資のリスクとは危険という意味ですか?
違います。資産運用業協会はリスクを「結果が不確実であること」と定義しており、具体的にはリターンの振れ幅を指します。振れ幅が大きい商品はリスクが大きいと表現され、上振れの幅も下振れの幅も同時に大きくなります。
Q. 外国の株式や債券で運用する投資信託は為替の影響を受けますか?
基本的に受けます。外国通貨建ての資産に投資する投資信託では、一般的には円高になれば基準価額にマイナス、円安ならプラスの影響があります。運用資産そのものが値上がりしていても、為替がそれを打ち消す場面があります。
Q. 金利が上がると債券を組み入れた投資信託はどうなりますか?
一般的に、金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券の価格は上がります。満期までの期間が長い債券ほど金利変動の影響を大きく受けるため、債券中心の投資信託でも基準価額が下がる局面はあります。
Q. 4つのリスクはどこで確認できますか?
交付目論見書の「投資リスク」の項目に、その投資信託が負う変動要因が列挙されています。購入の際は目論見書などでリスクを説明している項目にも目を通し、それぞれの投資信託が持つリスクを知ることが大切です。
参考にした一次情報・公的資料
本記事は投資信託の一般的な仕組みと留意点を解説したものであり、特定の商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資信託は元本が確保された商品ではなく、市場の変動等により損失が生じ、投資元本を割り込むおそれがあります。組み入れ資産やリスクの種類・大きさは投資信託ごとに異なるため、購入の際は必ず最新の交付目論見書など各社の公式情報をご確認ください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。掲載内容は2026年8月7日時点の公表資料に基づいています。
黒

黒瀬

投資信託の正体・編集担当。元銀行員の視点から、金融機関が積極的には語らない手数料やリスクの「裏側」を、忖度なしでわかりやすくお伝えしています。運営者情報はこちら

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